位置

Guide to Basilico

PART1

along Waltva River

ワルタヴァ河畔にて

操舵室

21

とりあえず、といってメナムが招き入れたのは操舵室であった。
続いて彼が
「水をお持ちしましょう」と、
下の船室に消え、カンパリは遠慮する間もなく、やや暮れかけた陽差しがつつむ操舵室に、ひとり残されてしまった。
カンパリは操舵室に入るのは初めてである。
幼い頃、ワルタヴァ川の遊覧船に乗った時、客用デッキの端から首をのばし、胸をおどらせながらガラス窓越しに操舵室の内部をのぞいた記憶がある。
陰になって、ほとんど何も見えなかったけれど、ふしぎにピカピカに磨かれた操舵輪だけは見えた。
いま、目の前にルコラ号の操舵輪がある。
その向こうにワルタヴァ川が見える。
いつもの風景を、外側からではなく、内側から見ている。
ふとカンパリは、時間が止まっているように思った。

椅子