位置マップ

Guide to Basilico

PART1

along Waltva River

ワルタヴァ河畔にて

24

汽笛

エルールの水だけでもバジリコ市の水道水とは味が違うのに、ナルカの鉱石入りのそれは格別の美味しさであった。一般的な家庭で、水に粉末状の鉱石を混ぜ、それだけを楽しむ習慣はない。菜人の調理に鉱石は欠かせないが、それも粉末状ではなく、ごろごろした石ころ程度の大きさのものをそのまま使う。ちなみに種類はクレの鉱石とカリハ、マデルの石、その他2、3種類くらい。水といっしょに鍋に入れ、そして、調理が終わったら取り出す。そうして何度でも使う。メナムがカンパリに見せた鉱石は、その形状も使い方も極めて珍しかったのである。
「まず、パウダー状にして使うのに向いている鉱石かどうか」
その粉末状の鉱石についてメナムが述べはじめた。
「次に粉砕。これも特殊な技術が必要です。ナルカ村では粉砕も行ってます。つまりナルカ村には資源と加工の技術があるわけです」
「なるほど。村としては・・・」
「ええ、期待の鉱石ですが。実際は・・・あまり、人気はないようです。確かに美味しいが」
ルコラ号の操舵室内は左岸通りからいちだんと低くなった位置のせいか、あまり外の物音がしない。その静けさの中で先ほどからグラスの中の透明の水を見ていたカンパリは自分がワルタヴァ川ではなく、どこか遠くの山奥の、深い谷間を流れる川の岸辺にでもいるような気がしてきた。
と、そのとき、メナムが操舵輪に近寄り、脇の方に手を伸ばしたかとおもうと船中に音が鳴り響いた。続いて遠くで音色は違うがそれに応える短い音が。
「すみません。知り合いの船が通りかかったものですから」
メナムが挨拶代わりに船の警笛を鳴らしたのである。
「ちょうどいい。外に出て話しましょうか。本の話を」

椅子