ドアはバードックが乗ると、再び閉まった。運転士は風を避けていると思われる。 客は彼ひとりしかいない。静かな車内には春の暖かな日差しがたっぷり入り込んでいる。しばらく発車を待つうちにバードックは眠気を覚えてきた。 うとうととしかけたときに、ごっ、と低い音がして、電車のモーターが回りだした。