位置

Guide to Basilico

PART2

Central Street

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ピレネオークの樹

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ふたたびアレント氏が話し出した、その内容はバードックの考えていたこととは違っていたけれども、十分に気をひかれる話であった。
「たとえば、目の前のピレネオークの樹ですが、・・・聞けば応えてくれる。ま、3回に2回はですね。わたしは、そのうち20回に1回くらい、いや10回に1回くらいは、ほんとうにピレネオークの樹が応えてくれたものだろうかと思うわけです。10回に1回くらいは、ピレネオークの樹の答えであるようでいて、実はわたしの頭の中に浮かんだ事柄をピレネオークの樹の答えであるかのように思いこんでいるのではないかと思うわけです。・・・といって、なんの不都合もあるわけではないのですけれどもね」
アレント氏のひとりごとのような語りに、自分の感じていたこととは違うと思いながらも、バードックはうなづいていた。
「いままではね」
「そう、いままでは」
しばらく、間があって、バードックが確かめるようにいった。
「・・・虫語の通じない虫、ですか」

椅子